気候変動の統合評価モデルにおけるTipping elementsの相互作用：グリーンランド氷床融解と大西洋熱塩循環崩壊を中心としたモデル化と分析

摘要

気候変動への関心の高まりを受け，近年，野心的な温室効果ガス（GHG）削減目標が国際的に議論されている．パリ協定では「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2°Cより十分低く保ち，1.5°Cに抑える努力をする」目標が掲げられた．2018年にはIPCCが1.5°C特別報告書を公表し，平均気温は既におよそ1°C上昇したこと，そして，気温上昇を1.5°Cや2°Cに抑制するためには，それぞれ2050年頃や2075年頃までに世界の人為起源CO_2排出を正味ゼロにする必要があることを指摘した．その一方で，世界各国の現状のNationally Determined Contributionは目標達成に不十分であることも報告されている．