歩行空間における搭乗者の快適性と移動の円滑性を考慮した自律移動計画手法に関する研究

摘要

近年，日本では高齢化に伴い，高齢者数が増加しており，高齢者の中での肢体不自由者数と認知症者数も増加している傾向にある．身体機能と認知機能の低下により，高齢者の自立した生活が難しくなることが考えられ，自立した生活の維持が重要な課題である．自立した生活の維持には外出頻度の維持が重要であることが言われており，身体機能の低下を補助し，屋外における移動を支援する重要性が高まっている．そのような高齢者の近距離移動を補助する機器としてハンドル形電動車いすへの期待が大きく，普及台数も増加している．一方で，ハンドル形電動車いすの交通事故は年間あたり約250件発生しており，自己申告する義務がないため，軽微なものも含めると，その数は10倍になると言われている．また，ハンドル形電動車いすユーザの 12%は認知障害の疑いがあり，踏切やあぜ道，凹段差で死亡事故も発生している．以上のような背景を踏まえ，筆者らは自律的な移動機能により高齢者の安全な移動を確保するハンドル形電動車いすの低速移動システムの構築を目指している．