GPSを利用したボール保持能力の検討

摘要

近年，グローバル・ポジショニング・システム（global positioning system:以下「GPS」と略す）により，試合中やトレーニング中の運動量および運動強度，走行距離などのデータを，簡便かつリアルタイムで取得することが可能になってきている．GPSはサッカーやラグビーの分野で積極的に活用され，選手の体力的要素の可視化に役立っている．しかしながら，先行研究などから現在の指導現場においてのGPSの利用場面に着目すると，これだけ簡便にデータを閲覧できるようになっているにも関わらず，チームにおいてフィジカルコーチやコンディショニングコーチが，選手のコンディションを把握するのに利用しているが，まだまだ一般的に使用頻度の高い機器ではないという印象を受ける．サッカーというスポーツは「混在型」に分類されるとおり(鈴木ら，2010)，相手との相対性が重視されるスポーツであるため，技術的あるいは戦術的要素を駆使して相手の体力的要素を発揮させないことによって自分たちが体力的に上回ることが可能である．実際に，先行研究においてもサッカーの熟練者の方が非熟練者よりも相手に寄せられない(プレスを受けにくい)ということが示されている(Yokoyama，2018)．つまり，サッカーにおいて習熟度合いの低い選手に比べ習熟度合いの高い選手は，「行きたいけど行けない、走りたいけど走れない状況」を意図的に作り出し，相手の勢いを削ぐ技術的・戦術的要素に秀でているのではないかということが推察される．こうした戦術的な考察にGPSを利用することができれば，トップレベルにおいてもチームの中でGPSの利用頻度が高まるのではないかと考えた．