イベントを起点とした教育・地域振興の取り組み:クロスメディアイベント078を例に

摘要

本稿では，神戸市で2017 年5 月に開催されたクロスメディアイベント「078」（ゼロ・ナナ・ハチ） [1] を例として，地域イベントを起点として地域振興とその過程を用いた研究・教育についての取り組みを紹介する．関東地区・東京への一極集中を例に出すまでもなく，地方都市の人口減少の現状は，政令指定都市である神戸市においても例外ではない．人口は阪神・淡路大震災の影響を除くと，2011 年度から減少してきており，2015年度には福岡市に人口で追い抜かれ，政令指定都市での人口ランキングを下げている．このような背景をもとに，神戸市では2016 年3 月に「神戸2020 ビジョン」を策定した[2]．神戸市の人口減少の問題点，すなわち，高齢者人口の増加，年少人口の減少，生産人口の減少をうけ，「若者に選ばれるまち，誰もが活躍するまち」をテーマに掲げ，人口減少に伴う課題を克服するための施策に加え，環境，高齢者・健康，地域・福祉コミュニティ及び住まいに関する施策が盛り込まれている．神戸市の発展を考える上で1995 年に発生した阪神・淡路大震災は無視できないが，2016 年度末をもって災害復旧債を完済するタイミングとも符合しており，神戸市が抱える課題を認識するとともに，未来へ向けた新しい一歩を踏み出すタイミングであったといえる．