ストラディバリウス・バイオリンの音響放射方向の揺らぎの特徴

摘要

「ストラディバリウス」とは，17 世紀から18 世紀にrnかけてイタリア・クレモナ地方で活躍した楽器製作者rn「アントニオ・ストラディバリ」によって製作されたrn楽器の呼び名である。そのほとんどがバイオリンであrnり，当時製作されたとされる1000 挺以上のバイオリンrnの中で約600 挺が現存している[1]。ストラディバリrnウスは，歴史的に名立たるバイオリニストによって愛rn用され，時代を超えて奏者から奏者へと引き継がれてrnいる。また，多くの楽器製作者にとってストラディバrnリウスは永遠に越えられない目標となっており，現在rn多くのバイオリンの形状はストラディバリウスに倣っrnている[1]。rnストラディバリウスの製法について，特別な木材やrnニスは使用されていないものの[2]，材料に含まれるミrnネラル成分の違いから水に浸す等の木材に対する下処rn理に特徴があることが報告されている[3, 4, 5]。rnこのようにストラディバリウスは歴史的に多くの奏rn者に支持され，製法についても独自の下処理の証拠がrn示されているものの，最近の心理実験では，ストラディrnバリウスよりも近年製作されたバイオリンの音色の方rnが美しいという結果が報告されている[6, 7, 8]。rnストラディバリウスとその他のバイオリンとの音rn響的な比較もこれまでなされてきたが[9, 10, 11]，両rn者の明確な違いについては最近まで明らかにされてrnこなかった。牧らはバイオリンの音響空間放射特性にrn着目し，ストラディバリウスとその他のバイオリンとrnの音響的な違いについて調べ，放射指向性が強く現れrnる周波数や弱く現れる周波数の比にストラディバリrnウス独自の特徴が現れることを明らかにした[12]。しrnかし，ストラディバリウスと並び称される「Guarnerirndel Ges`u」も，ストラディバリウスと同じ特徴を有しrnていた。rnそこで本研究では，空間音響放射特性の一つであrnるバイオリン演奏中の放射方向の揺らぎに着目し，rnGuarneri del Ges`u を含む他のバイオリンとは異なるrnストラディバリウス固有の音響的特徴がそれに現れるrnかどうかを調べる。