太陽電池の傾斜角度と積雪による発電量低下の関係

摘要

長野県では自然エネルギーの普及を地域経済の活性化に結びつけるために，地域の人材，技術，資金等を活用した地域主導型の自然エネルギー事業を進めている．その一環として，公共施設屋根，民間施設屋根を地域の民間事業者へ貸出し，民間事業者がメガソーラー発電所を運営する「おひさまBUN·SUN メガソーラープロジェクト」が昨年より進められている．そして同プロジェクトでは，幅広い関係者の参画を得て，計画，設計，施工およびメンテナンスを通じて得られる知見を広く長野県内エネルギー関係事業者へ公開するとともに，その売電収益を活用して地域の自然エネルギーの普及に資する取組み支援を行うなど公共性の高い「地域エネルギー事業者」を創出することを目的としている．(1) 昨年12 月には本プロジェクトの第1 号のメガソーラーとして，「岡谷酸素太陽光発電所」（以下，発電所）が運転開始している．この発電所にはいくつかの特徴があるが，その一つに太陽電池の傾斜角度が異なるエリアがあり，傾斜角度の違いによる発電性能への影響を実測することができる．既知のとおり，太陽電池の傾斜角度は太陽電池面への日射量だけでなく，多雪地域では太陽電池面への積雪状況に大きな影響を及ぼす．そして，傾斜角度が小さいほど太陽電池面の積雪が長く残り発電量を低下させるが，傾斜角度と発電量低下の関係を定量的に評価した報告は見られない．これは，同一場所で傾斜角度の異なる太陽電池が設置されていても，①太陽電池面の方位が違う，②傾斜角度の異なる太陽電池を直接接続し，一括して直流電力を計測したため発電量の違いが不明である，などの理由による．本論文では，発電所の概要を説明するとともに，本年2 月の大雪の発電量への影響が，傾斜角度によりどの程度異なるかを定量化したので説明する．