ひとによる抱き上げ動作解析体幹と腕の動きの解析

摘要

近年，日本では高齢化社会から高齢社会に突入し，日常生活に介護が必要である人口が増加している．それにともなって，高齢者が高齢者を介護する老老介護の状況も増加している．また，介護職員の約78%は女性であり，高齢の介護者および女性介護職員に対して，大きな力を必要とする介護作業は負担となっている．特に食事，排泄および散策等の際には，被介護者をベッドから車椅子に，また車椅子からベッドに一日に何度も移乗させる必要があり，さらに介護施設では一人の介護者が多くの被介護者を移乗させることによる身体的負担が大きい．介護については，多くの関連研究があり，大きく二つの分野に分けられる．ひとつは介護動作の解析で，起立動作の解析，介護動作の解析および介護動作をしている際の介護者の負担の解析等がある．これらの研究は，効率よく，また介護者に負担をかけない介護技術の確立に貢献している[1][2][3]．しかし，多くの研究は介護側の負担軽減を目的としたもので，被介護者の肉体的および精神的負担を考慮しているものは少ない．一方，介護を補助する目的の装置が開発および商品化されている．このうち移乗および移動を目的としたものは，移乗リフト，起立動作を支援する歩行器，平面板についたベルトによって被介護者を移動する移乗補助装置および介護者に装着して介護に必要な力を補助する装置等がある．しかし，これらの装置は日本では使われる機会が少ないのが現状である．