セル生産を実現するロボット知能化技術開発の展望

摘要

市場の多様化に伴う変種変量生産への対応や企業の海外流出，熟練工の退職と少子化に伴う就労人口の減少など，日本のモノづくりが抱える多くの課題を解決するために，新しい生産システムのイノベーションが求められている．著者らは，これらの課題に対して，ロボットでできることはロボットに置き換えて，人と共存·協調することが可能な生産システムの実現を目指している．このため，マテリアルハンドリングだけでなく，部品供給から組み付け作業までロボットの適用範囲を広げる革新的要素技術をプラットフォーム化した上で自律型セル生産ロボットシステムを開発した．同システムは，稼働率を増減させることで，雇用人員の増減を伴うことなく生産変動への対応が可能であるとともに，設備を再利用して環境を考慮しながら，生産機種切替えに迅速に対応することができる．従来のコンベアライン，人セルと，本ロボットセルの割合を，生産変動に合わせてバランスさせることで，製造業の抱える様々なリスクを分散させる新しい生産システムを，運用できる．本稿では，セル生産ロボットシステムの実現に必要な知能化技術開発のグランドデザインについて述べ，経緯と開発成果を紹介，今後の期待と課題を展望する．