ほぼ公的観測下の囚人のジレンマにおける協力のダイナミクス

摘要

本論文では，２人のプレイヤがお互いの見間違えをほぼ共有する「ほぼ公的」観測下の繰り返し囚人のジレンマにおける協力のダイナミクスを突然変異付きレプリケータダイナミクスを用いて分析した．２人がまったく見間違えない「完全」観測下では，常に裏切り(AllD) や一度でも裏切られたら許さない(GRIM) といった非協力的な戦略しか生き残らないことが知られている．一方で，ほぼ公的観測下では，有名なしっぺ返し(TFT) が均衡になることが知られている．そこでほぼ公的観測下で，，TFT が生き残るかどうかを検証した．その結果，AllD やGRIM に加えて，相手を1 度だけ処罰したら，協力に戻る戦略であるForgiver (FGV) が広いパラメータの組で生き残った．一方で，TFT はFGV と比べて狭い範囲でしか生き残らない．正確には，お互いの見間違えを共有するときはFGVが他の戦略を淘汰しやすい．一方で徐々に見間違えが共有されにくくなると，TFT とAllC の混合戦略が生き残りやすくなることを示した．