塗布型ペロブスカイト薄膜の熱電特性

摘要

近年，太陽電池や風力発電といった発電手法が注目を集めており，工場や機械の排熱，人の体温など質の低い熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換できる熱電発電にも注目が集まっている(1)．ハロゲン化ペロブスカイト化合物は， 100°Cの低温で作製できる塗布型薄膜半導体であり，高いキャリア移動度や長い拡散長を有している．特にSn系ペロブスカイトは極めて高い導電性を示していること(2)，熱電発電の性能を表す無次元評価数ZTが1を超えるシミュレーション結果(3)(4)や安価で作製できるという点から新しい熱電材料として期待されている．ペロブスカイト薄膜は簡便に作製できる一方で，作製時の様々なパラメータによって，物性のばらつきが大きいため，再現性の高い試料作製ノウハウの確立が必要である．本研究ではペロブスカイト CsSnI3の作製条件のうち，溶液撹拌時間，乾燥時の加熱温度と加熱時間を変更して複数の薄膜試料を用意した．スピンコート法で作製した薄膜試料の熱電特性としてゼーベック係数を定常法，導電度を四探針法，熱伝導率を3?法(6)(7)を用いてそれぞれ測定し，無次元性能指数ZTで作製されたサンプルを評価した．