イオンコンプレックス形成による薬剤含有キトサンゲル の調製及びその評価

摘要

近年、市販されている薬のおよそ40%、そして 開発候補化合物の90%が難水溶性であると言われ ている。薬剤が難水溶性であると、溶解度および溶 解速度が低下し、生物学的利用能が低下し、期待さ れていた薬剤の効果が発揮できなくなる。 イオンコンプレックスは、カチオン-アニオン間 相互作用によって形成された複合体のことであり、 これにより薬剤のポリマーへの分散が可能である。 さらに、イオン性ポリマーを用いると、イオンコン プレックス形成によるポリマーのゲルネットワーク が構築できる。ゲル形状の製剤は、経口摂取だけで はなく、経皮摂取や皮下注射といった幅広い応用が できることから非常に有用である。本研究では、薬 剤の溶解性改善の方法として、イオンコンプレック スを利用し、カチオン性水溶性高分子にアモルファ ス状態のアニオン性薬物を保持することにより可溶 化し、徐放性を向上させることを検討した。