修正した湿潤線型傾圧モデルにおける遅い東進性熱帯擾乱とエルニーニョへの応答

摘要

熱帯における水蒸気変動は、力学場と熱力学場の相互作用によって現れる「水蒸気モード」において本質的な役割を果たす。例えば、マッデン?ジュリアン振動(MJO)は熱帯暖水域上を約5 m/s で遅く東進する大規模対流域として観測される伝播性擾乱であり、水蒸気移流や放射加熱によって伝播および成長すると提案された。線型3 次元プリミティブ方程式に比湿偏差 ′の予報方程式を含むWatanabe and Jin の湿潤線型傾圧モデル(MLBM)において水蒸気モード解の存在が期待されるが、MJO のような内部変動を表現しない。この一因は、線型化Betts-Miller 緩和対流調節法により海面水温強制のない領域で微小な境界層湿潤静的エネルギー偏差?_b~′が ′と温度偏差を強く減衰させるために、自由大気の ′が力学場と適切に相互作用しないことだと考えられる。