定電位分極と定電流保持を用いた淡水中における銅の腐食診断法の検討

摘要

銅は優れた耐食性熱伝導性があることから吸収冷温水機やターボ冷凍機の伝熱管に用いられている．しかしながら，銅管内を流れる淡水により発生する孔食が原因となり，漏洩事故が発生することが報告されている．銅の孔食発生にはスケール形成に影響を及ぼす重炭酸イオンと，水の腐食性を高める塩化物イオン，硫酸イオンなどの攻撃性アニオンが起因している2）．そこで，星ら3，4）はこれまで銅配管を流れる淡水の水質解析による孔食発生のスクリーニングや，淡水における電気化学測定を用いた銅の腐食診断法を報告している．後者の銅の腐食診断法は，動電位分極曲線と定電流分極を用いることで，銅の腐食判別がおこなえる腐食診断法であり，銅の腐食形態に起因する試験溶液のpHに基づき腐食マップ3D4）を作製することで銅の腐食診断をおこなうものである．既報ではこの動電位分極曲線の0．2V vs．SSEでの電流密度から銅の腐食形態を分離できることを報告している．そこで，本研究では，0．2V vs．SSEの定電位分極で得られる電流密度を用いることで，簡易的に腐食マップ3Dを作製できる観点から，0．2V vs．SSEゐ定電位分極と定電流分極を組み合わせた測定で腐食マップ3Dを作製し，銅の腐食診断法としての適用を検討した．