ハイパースペクトルカメラを利用したエアロゾル特性導出手法の開発

摘要

近年急速な経済発展が進行している地域やその周辺では「PM2.5」と呼ばれる小粒径エアロゾルが問題視されるなど、エアロゾルが人々の生活に与える影響に関心が集まっている。エアロゾルの諸特性は時間的にも空間的にも変動が激しく、その性質を把握することが我々の大気環境を理解するために欠かせない。直達太陽光や散乱太陽光のスペクトルには大気上端から地上に至る間に存在するエアロゾルの情報が含まれており、従来よりエアロゾルの特性導出に利用されてきた。しかしながら、サンフォトメーター［1］やスカイラジオメーター［2］に代表される従来型センサーは0次元（点）観測を行うものであり、多くの散乱角の情報を集めるためにスキャンを行う必要があった。一方、近頃技術進歩の著しいハイパースペクトルカメラ（HSカメラ）は数十度の視野内を0.1度以下の細密グリッドで2次元（面）観測することが可能であり、これをエアロゾル観測に利用することで効率や精度を飛躍的に向上させられると期待できる。HSカメラを使うと0次元センサーでは困難であった太陽のごく近傍（散乱角～1度）の散乱光（オリオール）も容易に観測できる。このように散乱角の小さい前方散乱の情報は大粒径エアロゾルを識別するために特に重要である。また、0次元センサーでしばしば問題になる雲の影響は、2次元画像を解析することで容易に除去することができる。さらにHSカメラは連続スペクトルを取得することで波長特性に関してもより多くの情報を引き出すことが可能であり、例えば水蒸気のカラム量を精度良く導出することができる。本研究では特に対流圏エアロゾルに注目し、ハイパースペクトル画像（HS画像）からエアロゾル特性を導出する手法を開発する。