片耳難聴者による音像定位の特徴

摘要

本研究では片耳難聴者（単耳聴）による音像定位の特徴を検討した．その結果，健聴者に比べ定位の誤りがみられることが分かった．その誤りには傾向があり，患側や後方において，その領域内での誤定位がみられた．また，前方及び健聴側では正しく定位できていることが多い．このことから単耳聴であっても，前方及び健聴側から音が到来したときに参照可能な特徴量を用いて，音像定位が可能であると考えられる．なお，被験者A は多くの音像定位実験を体験して行く中で，定位の正解率の上昇があり，片耳難聴者の定位の精度は経験により上昇しうることも示唆される．帯域制限をした信号を用いた実験では，片耳難聴者の定位にも方向を決定する帯域ごとの特徴があること，8kHz から10kHz にかけてのスペクトラルキューが，定位に大きく影響する可能性があることを示した．今後は，刺激音の周波数帯域による単耳聴の音像定位の方向知覚の変化についてさらに検証を進めるとともに，単耳聴において参照可能な特徴量の調査，及びその応用について研究を進め，片耳難聴者のQOL向上が期待できるようなシステムの構築を目指す．