金属触媒のベシクル膜上における自己集積特性と重合反応への応用

摘要

資源循環型社会の形成を目指すには，原料の化石燃 料依存から循環可能なバイオマスへの転換が求めら れる．バイオマス由来のポリエチレンフラノエート (PEF)は， 化学繊維やペットボトルの原料となるポリエ チレンテレフタレート(PET)の代替材料として注目さ れている． 既往のPEF重合反応としてポリエステル交 換法がある 1) ．この方法は高温·高圧下で行われ 1,2) ， 重金属を触媒として用いている 3) ため，環境に負荷の かかる反応プロセスとなっている．そこで，ベシクル に注目した．ベシクルとは，脂質膜二重層からなる閉 鎖系小胞のことであり，脂質組成を変えることにより， 膜表面物性を変化させることができる 4) ．ベシクルの 膜上における配向分子の自己集積特性を利用し，金属 触媒を膜上に集積させることにより，PEF重合反応に おいて大きな促進効果が発現するのではないかと考 えられる．本研究では，ベシクル/金属触媒複合体によ るポリエステル交換反応の促進効果を検討した．