表面凹凸基板を利用したコラーゲンフィルムの作製における膜厚の効果

摘要

近年，医療技術の発展に伴い，より高機能な生体材料の開発に注目が集まっている。これまで耐久性や加工性の観点から高分子，金属，セラミックスは人工骨や人工血管などの様々な医療材料に応用されている。一方で，材料自体の生体適合性については，低抗原化を目指した材料の開発が進められている。そこで生体適合性の高い新規材料としてコラーゲンが注目されている。コラーゲンはポリペプチドが3 本集まり三重らせh構造を成した一般的なタンパク質であり，分子が自己組織的に会合することにより様々な生体組織を形成している。生体材料として強度や加工性を向上させるために，コラーゲンの配向制御は極めて重要である。現在主流のコラーゲン分子の配向制御法であるエレクトロスピニングや流動配向制御では，操作の複雑性大面積での不均一性や強度の低さなどの課題が残る。これまでにわれわれはコラーゲンのもつ自己組織的な構造形成に着目し，表面に凹凸構造をもつ基板を用いた新たな配向コラーゲンフィルムの作製法を開発している。しかしながら，フィルムの膜厚が配向状態に及ぼす影響については検討されていない。そこで，本研究では膜厚の異なるコラーゲンフィルムを作製し，膜厚が配向に与える効果について調べた。