皮膚疾患再現を目指した皮膚構造数理モデル

摘要

皮膚は生命内と外を分けている物理的な境界として働いているだけでなく，外界からの情報を体内に伝える働きや外界から体内への異物の侵入を防ぐ働き，体内の水分を外界に漏らさない働き（保水機能）を有している［1］．このような機能は皮膚の最も外層にある表皮が重要な役割を担っており，角層バリア機能と呼ばれている．表皮は，基底層，有麻層，顆粒層，角層からなる層構造であり（図1），単層である基底層において細胞分裂を起こし，基底層から有麻細胞，顆粒細胞と分化し，最終分化によって角質細胞となり，最後に垢となって剥がれ落ちる．細胞分化から垢となって剥がれる一連の現象はターンオーバーと呼ばれており，ターンオーバーが繰り返されることで表皮は常に新しく更新されている．ヒト皮膚のターンオーバーは約28日であることが知られている［1］．この表皮において角層バリア機能は，角層を構成している角質細胞と角質細胞間の隙間を埋める細胞間脂質によって確立されている．角層バリア機能の低下は保水機能の低下や外部からの細菌侵入を引き起こすことになり，生命活動の低下を招く恐れが強くなるため，この機能はヒトの生命維持において重要な機能の1つとなっている．