第一原理経路積分分子動力学法による面心立方金属中の水素の存在状態の解析

摘要

金属内における水素の振舞い，特に水素の拡散·捕捉挙動はその金属の水素貯蔵特性や強度の変化·劣化の速度論に大きく関わることから古くより注目されてきた［1］．これまで金属中の水素の存在状態·拡散特性について実験的に数多くの研究が為されてきたが，水素の挙動を精度よく検出，測定することは容易ではなく，その詳細については未だ明らかにされていない部分が多い．そのため，金属内における水素の詳細な振舞いを理解するには電子·原子レベルでの理論的解析の活用が望まれ，実際に種々の計算研究が進められている．一般的に材料中の原子の拡散は古典的な熱活性過程として取り扱ってもよいが，水素のような軽量原子の拡散を記述するためには原子核に関する量子効果を考慮する必要がある．本研究では，経路積分分子動力学法［2，3］と電子状態計算を統合した第一原理手法を活用して，代表的な面心立方（fcc）金属であるAl，Pd，およびCuを対象に，量子効果が水素の拡散過程に対して与える影響を解析する．