光受容タンパク質バクテリオロドプシンを用いた視覚情報処理型センサ

摘要

光受容性のタンパク質であるバクテリオロドプシン（ｂ R）は、塩湖に生息する高度好塩菌の細胞膜から抽出して 得られる．ｂＲは光駆動のプロトンポンプ機能を有してお り、ｂＲ薄膜を用いた光応答セルは光照射のON 或いはOFF の下で、時間微分型の光応答電流を発生する．この光応答 電流は外部からの電源供給を受けることなく得られ、ヒト や動物の視覚と同様の光応答特性を示す．一定の光量に対 しては反応せずに変化があった時のみに反応することから、 物体の動きの検出などに適している．自律移動型のロボッ トでは運動制御に特化したシステムを構築することが重要 であり、ハエなどの飛翔する昆虫に内在する視覚―運動制 御機能は非常に魅力的である．実環境下で動作するロボッ トの実現には、昆虫の視覚系にあるオプティカルフロー （相対運動する物体の速度場）検出機能の利用が考えられ る．デジタル演算によるオプティカルフローの推定も可能 であるが、プロセッサによる画像処理機能、消費電力、占 有空間、コストなどの問題がある．この問題を克服するこ とができれば、自律移動型のロボットやドローン等の開発 へのブレークスルーとなる．また、ミツバチ等が病気で死 滅した場合の農作物の受粉を担う超小型のロボット蜂の研 究が海外では行われており[1]、その実現には超小型で省 電力のオプティカルフローセンサの開発が必要である． 我々は、ｂR の野生型と遺伝子組み換えによる変異体の光 応答特性が異なることに着目し、両者を組み合わせたシミ ュレーションでオプティカルフロー検出が可能なことを示 した[2,3].そこで、アレイ型のバイポーラ光センサを構築 し、オプティカルフローの演算機能を有する視覚情報処理 型センサの開発を行ったので報告する．