リン酸電解液中で作製したアノード酸化ポーラスアルミナ皮膜への封孔処理

摘要

アルミニウム（Al）を酸性電解液中でアノード酸化することによって形成されるポーラスアルミナは，Al素地に高い耐食性を付与するだけでなく，様々な機能性や意匠性を付与することが出来る。建材や電子機器筐体などに使用されるアルミニウム製品において，カラーバリエーションは要求事項の一つであり，最近では金属光沢を抑えた不透明白色を呈する表面処理が，装飾性·意匠性や太陽光の吸収抑制などの観点で関心を集めている。著者らは不透明白色皮膜生成法として古くから知られるクロム酸法やェマタール法，またその代替としての電解法について，皮膜探さ方向のポーラス構造に着目し発色との関係について研究を行ってきた叫。エマタール浴は劣化が早く，高価であるため，安価な試薬として一次電解にリン酸を用い，エマタール浴中での二次電解でバリヤー層のみ厚膜化することで，高い白色度（58）を示す皮膜を作製することができた.しかし，不透明白色皮膜を工業的に使用するには，耐食性を付与する目的で封孔処理が必要になるが，リン酸中で作製した皮膜（リン酸皮鞠は封孔しにくいことが知られている.本研究では，リン酸皮膜に対し，水酸化リチウムを用いた封孔処理の最適条件を検討すると共に，リン酸以外の電解液で皮膜を形成後，リン酸中で電解を継続することで二層皮膜を形成し，皮膜組成や構造が封孔度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。