半凝固温度範囲が広いAl合金の双ロールキャスティングにおける鋳造条件が鋳造板に及ぼす影響

摘要

近年, 大型船舶用エンジンに用いられるすべり軸受の軸受材として，ホワイトメタルに代わりAl-40％Sn－1％Cu合金が求められている．しかし，Al-40％Sn－1％Cu合金には半凝固温度範囲が約400°Cと広いことや，巣の発生が顕著であるという問題点がある．巣の改善には，急冷凝固を行うことと，凝固過程における圧下が有効とされている．そこで本研究では，急冷凝固法の一種であり，凝固過程において圧下でき，凝固距離を長く設定できる異径双ロールキャスターに着目した．従来の鋼製ロールに替わり銅ロールを使用し冷却速度を高めた異径双ロールキャスターを用いて，連続したAl-40％Sn－1％Cu合金板の作製が可能であった．しかし，金型鋳造で作製したAl40％Sn－1％Cu合金板と比べ巣の大幅な改善は見られたものの，巣はなくならなかった．また，鋳造後の溶湯プール内のサイドダムには，半凝固状態となった溶湯の塊（以下凝固物と示す．）が付着した．サイドダムに付着した凝固物は時間とともに大きく成長し，最終的にサイドダムから剥離し板に巻き込まれた．鋳造条件が巣と凝固物のサイドダムへの付着に及ぼす影響は明らかになっていない．