PbTiO3型酸化物 PbVO3の Cr 置換による c/a 比の抑制と負熱膨張の実現

摘要

代表的な強誘電物質であるペロブスカイト型酸化物 PbTiO3は、Pb~(2+)の 6s2 孤立電子対と Ti ~(4+)の 2次の ヤーンテラー効果により、正方晶歪み(P4mm, c/a = 1.06)と大きな自発分極(Ps = 81 μC/cm~2 )を有する[1, 2]。 また、昇温で常誘電相に相転移する際に体積が収縮する、負の熱膨張を示す事が知られている[3]。PbTiO3と 類似の結晶構造を有する PbVO3は、dxy軌道秩序により PbTiO3を大きく上回る巨大な正方晶歪み(c/a = 1.23 と、点電荷モデルで 101μC/cm~2 もの巨大な自発分極を持つ[4]。しかしながら、c/a 比が大きすぎるため、 分極反転や昇温による常誘電相への転移、そして負熱膨張は実現していない。本研究では、PbVO3 の 巨大 c/a 比の低減と負熱膨張の発現を目的に、B サイトの V を Cr で置換した PbV_(1-x)Cr_xO3 を合成し、 その構造変化を調べた。