適用範囲拡張および暖房期のモデル住宅での検証: 潜熱蓄熱建材を含む熱負荷計算の実用性向上を目的とした置換モデルに開する研究

摘要

本研究では、建物内に設置されたPCMによる熱容量増大の効果を家具熱容量に置換することにより比較的簡易にPCMを含む熱負荷計算が可能となる置換モデルについて、適用範囲の拡張を検討した。既報で提案したPCM置換モデルについて、既報では非空調の簡易建物モデルの内壁等に設置されたPCMを前提としていが、本研究において、暖房を行うモデル住宅の外皮に設置されたPCMへの適用可能性を全1,728ケースで検証し、以下の知見を得た。•暖冷房を行うモデル住宅において、壁体内設置PCMを差分法で計算する詳細計算結果との比較を行い、本研究での比較の範囲においては、暖房設定温度より高い相変化ピーク温度のPCM導入のケースで、置換モデルにより詳細計算の暖房負荷および室温変動を概ね再現することを確認した。ただし、詳細計算と置換モデルでPCM相変化終了のタイミングに差が生じることがあり、そのような時間帯の室温変動に差が生じる。今後の課題として、例えばある室の床と天井のように複数の部位にPCMを設置する場合の置換モデルの扱いの検討や、蓄熱式床暖房のように積極的にPCMに蓄熱を行う暖房方式においての適用範囲の確認等が挙げられる。また、置換PCMについては、室空気との間で吸放熱するモデルとしているが、室壁体表面との放射も考慮したモデルとすることにより計算精度の向上が期待される。