層状鉄チタン酸と結合したペルオキシダーゼの可視光誘起酵素反応

摘要

酵素は基質特異性、反応選択性、環境調和性に優れた生体高分子触媒であるが、非生理的環境下では容易 に変性、失活するという欠点がある。この問題は現在、不溶性の無機/高分子粒子表面に酵素を吸着させる固 定化酵素により、耐久性の向上が図られている。また、酵素反応を人為的に利用する場合、反応速度の制御 が難しい。本研究室では層状チタン酸の層間に酵素を挿入（固定化）し、この複合体への紫外光照射による 層状酸化物の光励起および層間酵素分子への電荷移動に基づく酵素活性の光制御が可能であること明らかに してきた。しかし、長期的な紫外光の使用は非生理的環境下と同様に酵素変性を引き起こす。そこで、本研 究では半導体層として可視光励起可能な鉄をドープした層状チタン酸を合成し、酸化還元酵素であるペルオ キシダーゼを層間に挿入し、酵素活性の可視光制御を行うことを目的とした。