(250-0350)”磁気的強化”を示すFe‐Co 合金の応力急変試験による高温変形機構の検討

摘要

鉄を代表とする強磁性材料はキュリー温度Tc における磁気変態にともない，磁気的性質のみならず，弾性定数や拡散係数などの物理的性質が変化することが知られている。また，クリープ速度の温度依存性にも変化が生じることが報告されている[1]。さらに，Watanabe[2, 3]は，Fe-Co 合金において強磁性温度領域においてのみ固溶強化が明確に観察されることを報告している。Fe-Co 合金は，母相原子と固溶原子のサイズミスフィットが+0.005[4]と非常に小さく，サイズ効果による固溶強化は期待できない。さらに，Co 添加による剛性率の変化も小さく，剛性率効果による固溶強化も考えにくいことから，Fe-Co 合金の強磁性温度領域でのみ観察される固溶強化は，”磁気的強化”（magnetic strengthening）と呼ばれているが，そのメカニズムは十分には理解されていない。そこで本研究では，定常クリープ変形中に応力を急変させることで変形応力に含まれる有効応力成分の有無を判別できる，応力急変試験法を用い，Fe-Co 合金の強磁性温度領域にみられる”磁気的強化”のメカニズムを検討することを目的とした。