循環器系数理モデルによる血流依存性拡張反応時の血流波形解析

摘要

心疾患や脳梗塞などの循環器系疾患は，日本人死因のうち悪性新生物に次ぐ大きな割合を占めている．これら疾患はアテローム性動脈硬化症（以下，動脈硬化）が進行することによって発症することから，その進行度合いを評価することが疾患発症予防の観点から重要な課題となっている．動脈硬化症の初期段階では，血管内皮細胞による血管の自律的な調整機能（以下，内皮機能）が低下することが知られている．そのため，内皮機能を評価することで早期に動脈硬化症を見出すことは，疾患発症の予防につながると期待されている．現在，内皮機能を評価する方法としてFMD(Flow-Mediated Dilation)検査が普及しつつある．FMD検査は前腕部の駆血状態からの解放によって生じる急激な血流の増加現象（反応性充血）に伴う血管拡張反応（FMD反応）に基づいて内皮機能を評価するものである．