( P137-P0203) CS2 ガス硫化法による高酸素β-La2S3 の合成と電波吸収体としての可能性

摘要

La2S3 は、923 K にて斜方晶のα-La2S3 から絶縁体の正方晶β-La2S3、さらに1573 K に て半導体の立方晶Th3P4 型γ-La2S3 へと相変態する。β-La2S3 はLa10S15-XOX（0≦X≦1）と表される場合もあり、β-La2S3 からγ-La2S3 への相変態温度は酸素濃度により高温側に移動する。これまでに、La2S3と同様にα、β、γ と相変態するCe2S3 に着目し、市販のγ-Ce2S3 粉末を出発原料に用い、γ-Ce2S3 粉末をβ 相が安定な温度域に保持しながら雰囲気パルスCVI 法により酸素を富化させることにより高酸素β-Ce2S3 粉末を合成し、その粉末を分散させたエポキシ樹脂は高周波域において実用化レベルの電波吸収特性を有することを見出してきた。β- Ce2S3 の誘電正接（tanδ）は酸素濃度に依存し、高いtanδ を有することは、周波数に反比例してコンデンサのインピーダンスが低くなるため抵抗にも電流が流れ、電波エネルギーから熱エネルギーへの変換を利用した電波吸収体への応用が期待される。本研究では、最初に市販のβ- La2S3 粉末からパルス通電焼結法により焼結体を作製し、高周波におけるtanδ を評価するところから実験を始めた。次に、安価なLa2O3 粉末の硫化のみのプロセスにより電波吸収体に適した酸素が富化されたβ-La2S3 粉末の合成を目的とし、その硫化条件の最適化を行った。