( J63-1401) 電気抵抗測定によるマルテンサイト鋼中の固溶炭素量の評価Estimation of solute carbon concentration by electrical resistivity method in martensitic steels

摘要

一般に、焼入れままのマルテンサイト鋼の強度には過飽和に固溶した炭素が主に寄与していると言われているが、近年3DAP などの解析手法により、Ms 点が高い低炭素鋼では自己焼戻しによって固溶炭素量が著しく減少していることが示唆されている(1)。一方、Ms点が低い高炭素鋼では自己焼戻しが抑制されるため、添加炭素量のうち固溶炭素の割合が上昇すると考えられる。マルテンサイト鋼の強化機構の理解には固溶炭素の定量評価が不可欠であり、3 DAPのような局所的な直接観察と同時に、試料全体の平均的なマクロ情報を得ることも重要となろう。著者らは電気抵抗測定によりマルテンサイト鋼中の固溶炭素量を見積もる手法について検討を行っており、前報において、Fe-0.3%C の低温焼戻しに伴う比抵抗変化を調査し、固溶炭素量が析出に伴い変化していく挙動を明らかにした(2)。本研究では焼入れままマルテンサイトの固溶炭素量を電気抵抗測定により見積もることを目的とし、炭素量の異なる鋼に対して比抵抗の炭素濃度依存性ならびに転位密度や粒界密度の影響について調査を行った。