適応出力推定器を用いた予測制御系設計

摘要

プロセス系などに有用な制御手法の一つとして予測制御手法が盛hに研究されており,モデル予測制御（MPC）や一般化予測制御手法（GPC）など数多くの予測制御手法が提案されている．これらの予測制御手法はシステム出力の予測値を用いて,有限の時間間隔で与えられた評価関数を最適にするように制御入力を求めることから,基本的には対象システムの正確なモデルが制御器構成に必要とされる．しかし,実際にはシステムパラメータが未知である場合や,時間の経過とともに変化する場合も多く存在する．このような制御対象に対しては,オンラインで逐次未知パラメータを推定しながら予測制御系を構成する方法もいくつか提案されているが,制御対象の次数が大きな場合などは制御系構成が複雑となり,また,正確な次数がわからない場合などは,精度の良い推定が得られない場合がある．そこで本報告では,未知である高次のシステムに対し,構造の簡単な出力推定器設計法と,構成された出力推定器を用いた適応予測制御手法の提案を行う．提案手法では未知システムに並列に適切な補償器を付加することで,1次のシステムに低次元化されたシステムに対して出力推定器を構成する構造となっており,高次かつ次数未知のシステムに対しても適応出力推定器が設計できる．以下,2章で問題設定を行い,3章で適応出力推定器の提案,4章で提案された出力推定器を用いた適応予測制御器の構成法を示す．最後に,提案された制御手法の有用性を数値シミュレーションで示す．