エネルギー消費と快適性の最適化に基づいたマルチゾーン自動車空調制御

摘要

本稿では, 自動車の温熱環境モデルを用いたエネルギー消費と快適性の最適化結果に基づき制御系設計を行った. 最適化の結果は, 冷房時におけるエネルギー消費と快適性のバランスから, ヒータコアを用いる吹出し温度制御を避け, 乗員のいるエリアに対して吹出し風量を制御すべきであることを示していた. そこで, 吹出し風量を操作量, 快適性を制御量とし, 定数スケーリング行列付きH_∞ 制御を用いて日射量変動にロバストなコントローラを設計した. また, アクチュエータに存在する制約に対してコントローラの劣化を抑えるanti windup 補償器を付加し, 最終的に得られた制御系の有効性を確認した.従来の一般的な空調システムでは吹出し温度を主に操作量として, 設定温度に室温を維持する制御が行われ, さらに快適性を確保するために経験に基づいて細かな補整が行われていた. 一方で, 本稿で設計したコントローラは直接的に快適性を制御することで補整を必要としない. また, 最適化に基づいて吹出し風量を操作量としたが, この場合においても快適性が維持できることを確認した.今後は, 日射量と外気温度によるモデルの変動が大きいことから, これらをスケジューリングパラメータとしたゲインスケジューリングコントローラを設計することを考えている. また, 本稿では快適性を測定できるものとしていたため, モデルをもとに快適性を推定する手法について考察する必要がある.