価格提示による最適運用状態への誘導と安定性に関する考察

摘要

本稿では, 文献[3] で議論された, 複数のエージェントが自身の目標運転状態を決定する分散化のもとで, 社会全体としての目的を達成する統合化された解を構成する枠組みの安定性を考察した. とく本稿では, 安定性の解析に注目するため, 単一のエージェントが自身の目標運転状態を決定する限定された枠組みを考えた. ここで公共の利得確保を目指すユーティリティーは, 単位電力を生産あるいは消費する際の付加的な価格をエージェントに提示する. このとき, 適切な価格提示をおこなうことで, 最適な目標運転状態がエージェントの最適化によっても実現される. また勾配法を利用した実時間での価格策定方策を提案し, エネルギー需要·供給ネットワークを最適な運用状態へと誘導する数値例を示した. 安定性の解析では, 運転状態の決定に対応する最適化問題の勾配に着目することで, 局所的な安定性の解析が線形近似システムの安定性解析に帰着されることを示した. 複数のエージェントが分散的に運転状態を決定する場合[3] の安定性の解析が, 今後の課題となっている.