サービスに対する顧客の期待の変化を表現したユーザーモデルの提案

摘要

日本経済の発展に伴いサービス産業の重要性が高まる中で，サービスに対する研究活動が活発になっている．サービス研究においては，高効率化やコスト低減などの提供者視点での評価に加え，受給者視点でのサービスの解析および設計が課題となっている．そのため，サービスを評価する際に顧客満足度が重要な指標となっている．顧客満足度に関する先行研究において，顧客のサービスに対する期待が顧客満足度に影響を与える因子として重要視されている．本研究で事例としている観光サービスのように，一連のサービス利用期間が長期に亘るサービスでは，顧客の期待がその期間中に変動することが知られている．期待の変動は評価にも影響する．そのため，このようなサービスに対しては，顧客のサービスに対する期待を表現することで，期待の変化を反映したサービスの解析·評価を実現することが求められる．先行研究における顧客のモデルは，サービスの提供·利用までに確定する要因について表現するに留まっている。顧客モデルで表現される要素にはサービスの事前に確定する内容とサービスの最中に変化を起こす内容とがある。本研究では，後者の中で期待に着目する。著者らはこれまでに，観光サービスを題材に期待の形成に関するモデル化を進めてきた．本モデルでは継時的な期待変化を表現している．本稿では，同様の事例について，モデルの拡張と旅行者に対する聞き取り調査を利用したモデルの検証および改善を行う．