サービスにおける異質性を考慮したサービスコストシミュレーション手法

摘要

近年，社会の成熟により経済の中心はモノからサービスへとシフトし，多くの産業分野においてサービスがより一層重視されている．以上の背景のもと，サービスが生み出す高い付加価値に着目し，サービス設計のための工学的な方法論の提供を目的とするサービス工学[1]が提唱されている．サービスの設計においては，そのビジネスとしての観点から，対象とする受給者に提供する価値だけでなく，採算性を維持する上で提供に要する金銭的なコストを考慮することが必要である．サービスの提供に要する金銭的コストは，その殆どが設計段階において決定されることから，サービス工学ではサービスの提供コストを設計段階において評価するための手法を提案している[2]．しかしながら，サービスの提供プロセスが内包する多様な構成要素や事象が有する種々の異質性[3]の存在により，その提供コストには物財以上のばらつきが生じる．そのため，サービス設計段階においてもこれらの異質性による提供コストのばらつきを予測した上で，サービス設計解の評価および改善を実施する必要がある．本研究では，サービスが内包する異質性を，異なるサービス構成要素が保持する属性の差異として定義する．さらに本研究では特に受給者に着目し，サービスに関する知識量の違い等，受給者の属性の差異を受給者に起因するサービスの異質性として定義する．そして，この受給者に起因するサービスの異質性により生じる提供コストのばらつきを，設計段階において予測するためのシミュレーション技術の確立を目的とする．そのため，本稿では，サービス提供コストに影響を与えるパラメータのうち，受給者属性の差異によりばらつきが生じるパラメータを抽出する手法と，この結果を踏まえ，受給者属性の差異を考慮した提供コストを予測的に測定するシミュレーション手法の提案を行う．