高温放置された小径玉軸受の性能変化に関する研究

摘要

転がり軸受用の鋼球は線材から鍛造，研削，ラップを経て所定の精度に加工される．しかし，鋼球内部には図１に示すように，線材の引き抜き時において形成された材料フローが残っており，内部応力は均一ではない．内部応力は熱によって開放されることはよく知られている．そこで転動体を高温に放置した場合の形状変化を観察した結果，90°C以上で放置した場合においては，真円度が大きくなり，初期の玉精度等級よりも2 段階下がる程度まで変形することを明らかにしてきた．しかし，転動体の精度が低下しても玉軸受の性能が低下しなければ問題にはならない．また，現実的には転動体のみが高温に放置されることはなく，軸受全体が高温に放置された場合を考えなければならない．そこで本研究では，転動体だけが高温放置された場合とともに軸受全体を高温放置した場合における振動特性の変化について報告する．