解析手法によるBaTiO_3の圧電性を向上させる添加物の探索

摘要

近年，体内設置を目的としたBio-MEM(医療用電子機器)用圧電アクチュエータの研究開発が行われ，その候補材料として無鉛圧電材料が挙げられている．しかし，無鉛圧電材料は高い圧電性を示すPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に比べて圧電性が低い問題点がある．そこで，圧電性を向上させるために添加物を加える手法が報告されている．しかし，圧電性を向上するための最適な添加物を探索するには試作実験を繰り返す必要があり，膨大な時間や費用を要する問題が生じてしまう．本研究では，添加物の影響を検討可能な解析手法を提案し，圧電性向上に有意な添加物の選定を目的とする．ここで，回折強度が圧電性に対して変化する[2]ことから回折強度の変化を確認できるリートベルト法を用い，圧電性を向上させる添加物の条件探索を行なった[2]．しかしリートベルト法の特性上，幾何学的視点でしか添加物の影響を考慮できなく，圧電性を向上する添加物の選定を行うことが困難なことが問題点としてあげられる．したがって本報では，エネルギ的視点から添加物の影響を考慮可能な量子化学計算プログラムGaussian を用いて添加物の影響を検討し，圧電性向上に有効な添加物の探索を行う．ここで，本研究では解析対象として，無鉛圧電材料の中でも一般的に知られているBaTiO_3(チタン酸バリウム)を採用した．