最近の浸炭窒化焼入れによる歯車の高強度化技術

摘要

浸炭窒化焼入れは，0.1～0.2mass%の微量窒素による焼入性の改善（表面硬さ向上）を狙いとした炭素鋼への適用例を除けば，工業的応用例は少ない．この原因として，残留オーステナイト(γ_R)の増加によって表面硬さの低下を招きやすいことに加え，窒素による組織や機械的性質への影響が必ずしも明らかにされていない点が挙げられる．近年，従来に比べ高濃度の窒素(0.5～0.8%)を侵入させた新しい浸炭窒化処理，そしてさらに強力ショットピーニング処理を組み合わせた新工法が開発され，難課題の一つであった歯面疲れ強さの改善，すなわち耐ピッチング性が飛躍的に向上した．本報では，高濃度窒素を侵入させた浸炭窒化層の冶金学的特性と耐ピッチング性，そして自動変速機歯車への応用例を紹介する．