浸炭·浸炭窒化焼入れによる鉄鋼材料の強化技術

摘要

機械構造用部品においては，過酷な環境条件下で使用されるため，耐摩耗性，耐疲れ性，耐焼付性，耐食性，耐熱性，潤滑性など高い特性が求められる．表面熱処理の目的は，表面の全体あるいは必要部分を変質させることによって，材料本来の性質，例えば鋼では靭性すなわち粘り強さを損なうことなく，これらの特性を向上させることにある．特に近年のCO_2排出量削減の観点から，運動エネルギーロス低減のため，部品の小型軽量化が進められ，部品の高強度化などの技術的課題を克服するために，高強度化表面熱処理技術が開発されたりしている．また，金型や工具においても，生産性向上に伴う使用環境の高負荷化が進行し，寿命延長のための解決手段として表面熱処理が行われている．本稿では，鋼の表面熱処理の中でも特に高負荷部品に適用されている浸炭焼入れ，浸炭窒化焼入れについて，ガス浸炭およびガス浸炭窒化法を主体に処理の概要を解説する．