第26回市民セミナー「水環境におけるマイク口プラスチックに関する最新の動向」の開催に際して

摘要

第26回巿民セミナ一を開催するに当たり，日本水環境学会セミナ一企画部会を代表して 一言ご挨拶申し上げます。海洋ごみの問題は古くから知られており，そのうちの約70%がプラスチックと言われて います。プラスチックは分解性が低く，環境中に長く留まることから，これまでも漂流ご みなど様々な問題が指摘されてきました。近年，海洋に排出されたプラスチックが熱や紫 外線や波などによって破砕され，細片化されることが明らかとなってきており，特に5mm以 下の微小なプラスチックがマイクロプラスチックと呼ばれています。マイクロプラスチッ クは通常のプラスチックごみと比べて小さく，より多くの生物が誤飲，誤食することが考 えられますが，それ以外にも化学物質の毒性への懸念も指摘されています。具体的にはプ ラスチックには多くの可塑剤が使用されていますが，マイクロプラスチックとなってもこ れらの化学物質が残留していることに加え，海洋を漂流する間にDDTやPCBに代表されるよ うな海洋中ではごく低濃度でしか存在しない有害性の高い化学物質を吸着し，濃縮するこ とが明らかになりつつあります。さらにマイクロプラスチックを摂取した魚や鳥などにこ れらの有害な化学物質が移行することも明らかになってきています。しかし，微細な粒子 となったプラスチックを水環境中から検出，定量することは大変難しく，世界的な汚染実 態や水環境中における動態，生物や人への影響についてはまだまだ明らかになっていませ h。