航空機の着氷に対する表面への凹凸加工と超撥水コーティングによる影響

摘要

航空機の翼やエンジンなどに氷が付着する着氷現象は，過去に重大な航空機事故の原因となっている深刻な問題である．着氷は低温多湿の環境下で，空気中に含まれる水滴が，機体に衝突する際に氷となることで発生する．特に-10 °Cを下回る低温環境下では，空気中の水滴が凍結せずに過冷却水滴として存在しているため，機体に衝突した瞬間に過冷却水滴が凍結することで着氷現象が発生する．このような場合，氷が翼の前縁部付近に樹氷のように風上に向かって大きく成長するため，空気力学的な悪影響が大きい．また，エンジンに着氷すると，流路が狭まってエンジン性能が低下したり，脱落した氷塊がエンジンに吸い込まれることでファンブレードを損傷したりすることもある．1988 年の東亜国内航空機米子空港オーバーラン事故では，凍結によって昇降舵が適切に働かなくなり，離陸中止を試みるもオーバーランして滑走路端の中海に突入した．また，1991年のスカンジナビア航空751 便墜落事故では，主翼から脱落した氷をエンジンが吸い込hで圧縮機が損傷し，緊急着陸事故を起こした．さらに，1994 年のアメリカンイーグル航空4184 便墜落事故では，防除氷装置の設計上の問題によって主翼の着氷を除氷することができず，墜落してしまった．