ヒンジ型可変キャンバ羽ばたき翼の空力特性に関する実験的?数値的研究

摘要

これまで一般の人には遠い存在であった航空機は，小型ドローンの登場により，人々の身近な存在となった．しかし，人々の生活環境近くを飛行するには依然として危険があり，様々な規制が設けられている．人々の生活環境により深く入り込むためには，そのサイズの小型化が求められる．航空機のサイズの小型化は，擾乱に対する不安定性の増加，流れの低レイノルズ数化による空力性能の低下，という問題を招くが，昆虫はそのサイズの小ささにも係わらず，高速飛行，ホバリング，旋回飛行などの俊敏かつ安定な飛行を羽ばたき運動によって実現しており，羽ばたき飛行は，手の平サイズ以下となる超小型飛翔体（Micro Air Vehicle, MAV）において適していると考えられる．これまでの多くの先行研究によって，固定翼·回転翼機とは異なるその空力メカニズムが明らかにされてきた．特に，翼周りに発生する前縁剥離渦，回転渦を効果的に使用しているのが特徴である．これらの研究成果を応用した羽ばたき型MAV の開発も世界中で行われ，いくつかの機体は羽ばたき飛行に成功している．しかし，昆虫の優れた飛行性能と比べると，その性能はまだまだ遠く及ばず，昆虫の羽ばたき飛行には未だ明らかにされていない秘密が隠されていると考えられる．