時変遅延結合を伴うカオス結合発振器に生じる振動停止現象の実験的検証

摘要

発振器の振動が拡散的結合に伴い停止する現象は, 振動停止現象として知られている. 同一の発振器を結合した発振器群では, この現象は発生しないが, 結合信号に伝送遅延が伴うと, この現象が誘発される.振動停止現象は, 自励振動群の不要な振動の除去に活用できるのではないかと期待されているが, 実装にあたって問題点がある. 例えば, 発振器が互いに遠い場所に配置されていたり, または, 発振器間の信号伝搬速度が振動周波数に比べてかなり遅い場合, 伝送遅延が相対的に長くなる. そのような長い伝送遅延は, 振動停止現象を誘発しない. そこで, 長い伝送遅延でもこの現象を誘発するいくつかの手法が提案されている. しかし, これらには実装難であったり, 高コスト等の問題があった.最近, それらの問題を解決する手法として, 時変遅延結合が提案された. これは, 伝送遅延を周期的に時間変化させることで, 振動停止現象を誘発させる方法である. しかし, 実際のシステムに適用するには, この手法が, パラメータ誤差やノイズ等の外乱に対してロバストであることを, 実験的に検証しなければならない.本報告では, 時変結合によってカオス発振器に振動停止現象が誘発されることを実験的に検証する. また, 解析結果と実験結果が概ね合致することを示す.