振動パターンと視覚情報の同時刺激による Cutaneous Rabbit Illusion効果の向上

摘要

我々がものを触る際，体性感覚の触覚知覚によって必ずしも目標の性質を正しく読み取れるとは限らず，この過程においては幻覚を伴う場合がある．人間の触感覚における幻覚の一つに，Cutaneous Rabbit Illusion現象がある．この現象を利用して，2つの振動子を用いて皮膚上の二点を特定の条件下で刺激すると，その間の複数の位置を触感覚がホッピングしていく幻覚を感じる．これまでの研究で我々は，この幻覚を利用した触覚呈示と，仮現運動を用いた触覚呈示の比較を行った．実験の結果，この現象を利用した呈示は，同じ振動子の配列で仮現運動を利用した呈示より振動情報を細かく呈示できるため，実際の振動子数より多くの振動子が動作していると知覚されることが解った．日常生活において対象物を触る際，目標を見ながら指や手掌で，その材質や微小な動きなどの情報を知覚する．このことから，触覚情報を呈示する際には，視覚情報も同時に呈示した方が，より良い触覚呈示が可能と考えられる．そのため，Cutaneous Rabbit Illusionを触覚呈示手法の一つとして利用する際に，視覚情報がどのような影響をもたらすかを検討することが必要となる．本研究では，我々は先ずCutaneous Rabbit Illusionを用いた触覚呈示と視覚情報の一致性を調べた．更に，視覚情報ありとなしの触覚呈示との間で，知覚される感覚を被験者実験によって比較した．