感覚神経線維の電気刺激による人工触·圧覚の生成と感覚強化感覚機能を有する義手の開発に向けて

摘要

ヒトの触·圧覚は皮膚の機械受容器によって物理的刺激を検出され，その情報が感覚神経を介して中枢の大脳皮質感覚野に伝わることによって発生するが，これらのシステムが傷害されその機能を損失した場合には，これらの感覚は失われ，日常生活に苦悩することは必然である．これに対して，損失した触·圧覚機能を補う一つの方法として，触·圧覚を検出しているメルケル小体（SA-I）ユニットに接続している感覚神経線維を直接電気刺激し，人工的に感覚機能を補填·強化する機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation (FES)) という手法があげられる．我々は，FESの一つであるマイクロスティミュレーション法を，感覚機能の中でも触·圧覚に応用し，人工的な感覚生成について研究を行っているが，本稿では，末梢神経障害による感覚マヒの患者等に対して，末梢神経中の感覚神経線維を電気刺激してやることにより，患者の傷害された手指に加えられた触·圧刺激を触·圧覚として人体にフィードバックし，感覚機能を補填·強化実験の結果および，義手に感覚を付与し，義手に加えられた触·圧刺激を自然な触·圧覚として装着者に提示する実験の結果について述べる．