等価応力比にもとづく金属疲労強度データの整理法ならびにその定式化について（疲労強度線図の材料依存性の考察）

摘要

疲労における切欠効果に関しては，例えば軟鋼と高張力鋼の比較，あるいは低炭素低合金による高張力鋼と高炭素高合金による高強度鋼（例えば，転がり軸受鋼SUJ2）を比較する場合に現れる材料間の切欠効果特性の違いなどいまだ解明されていない問題も多い．また，深さが数μm あるいは数10μm オーダーの極端に浅い切欠の場合，深さがmm オーダーの通常の切欠の場合と比較して，切欠の応力集中の影響が極めて小さくなると云ういわゆる寸法効果が知られており，この問題も十分に解明されているとは云えない．寸法効果の解明は，ボイド，介在物，異常組織などの，いわゆる材料欠陥の影響下での疲労強度を明らかにする上にも重要な課題である。筆者はこれまでの研究で，平滑·切欠試験片の疲労強度の相関パラメータとして等価応力比を提案し，これを用いた疲労強度整理法について研究した．この手法は疲労強度線図の相似性に基盤をおくものであり，切欠深さがほぼ1 mm 以上であれば，等価応力比と切欠底応力範囲の関係により表した切欠試験片の疲労強度線図を，通常の応力比と応力範囲の関係により表した平滑試験片の疲労強度線図と相似関係におくことができる．これは，平滑試験片の疲労強度線図に現れる材料の疲労特性をそのまま反映した形で，切欠試験片の疲労強度線図を定式化できることを意味する．研究ではさらに，疲労強度線図どうしの間で相似関係が成立しないと考えられるような深さが数μm あるいは数10μm の極端に浅い切欠の場合に対しても本手法を応用し，寸法効果を考慮に入れた疲労強度線図の定式化を行い，これを表現する方程式を提案した．本報では，以上の研究経緯を表すとともに，疲労強度線図の表現式にもとづいて疲労強度の材料依存性（疲労強度線図と材料の関係）を考察した．