故障解析·リスク評価における定性的評価プロセスの実践的検討;食品用高圧処理装置における適用と課題

摘要

機械装置に対するリスクアセスメント作業の実施は，作業者の安全確保，ユーザー企業並びにメーカー企業の経営リスクの回避の観点から重要である．また，安全規格適合が要求される海外への輸出販売を行うためには必須の作業である．しかし，実際には国内向けの機械製品を製造している企業の多くはリスクアセスメントの実践に困難を抱えている．ISO12100:2010 には，リスクアセスメント作業に必要な考慮事項，故障解析·リスク解析の手法等が例示されているが，実際に組織内でどのように作業を行っていくのか，その具体的な手順について詳細には記載されていない．リスクアセスメントを実施したことのない企業にとっては，具体的なガイドラインが存在しないことが作業実施の障害になっていると考えられる．海外への製品販売を行っている企業や国際的に展開している大企業等では組織内で手順が確立されている可能性はあるが，公表されるデータにはならない．国内の製造業の大多数は中小企業であり，専門的部署を設置することは困難である．中小企業では，設計者が通常の業務と並行してリスクアセスメントを行っていることがほとhどだと考えられる．従って，国内でリスクアセスメント実施を普及するためには，中小企業での実施に適応した手順を確立する必要がある．そこで本研究では，食品用高圧処理装置の開発事例を用いて，リスクアセスメントの実践に関する課題を抽出することを目指す．