心理的ストレスによる唾液中コルチゾール分泌変化

摘要

ここ数十年の精神神経内分泌学研究により，内分泌学的ストレス反応のメカニズム解明に関する様々な知見が蓄積されてきた．特に，急性の一過性ストレス反応に関しては，実験室実験で多く検討され，実験的に与えられた刺激（ストレッサー）に対する内分泌系の生理反応の強度や反応性の早さなどが明らかにされてきた．一方，長期にわたる人間関係の悩みや，多忙な状態の長期化によるストレスのような，慢性ストレスに関する研究は非常に少ない状況である．現代社会はストレス時代と呼ばれるようになって久しく，ストレスにより引き起こされる病気も多い．そのため，日常生活上のストレスと健康との関係性を検討するためには，慢性ストレスの生理反応を明らかにすることは重要である．そこで，本研究では内分泌系のストレス反応を，ストレス反応の1 つである視床下部－脳下垂体－副腎皮質系(Hypothalamus-Pituitary-Adrenal axis; HPA axis)を介したコルチゾール分泌（ストレスホルモンと呼ばれる）により評価し，慢性の心理的ストレスとの関係性を検討することを目的とした．