ポリマー電極表面へのシランカップリング剤の吸着におよぼすpHの影響－水晶発振子マイクロバランスおよびAFM-IRによる分析

摘要

シランカップリング（Si)剤は、分子内に反応性の異なる2種類の官能基を持ち、有機材料および無機材料を接合する分子接着剤として働く。そのため、接着剤や塗料などに使われており、Si剤を用いることで複合材料の機械的強度の向上や接着性の改良、表面改質などが期待される。一方、NMR[1]やAFM[2]によりSi剤の反応機構、形態について研究が進められてきたが、Si 剤の溶液pHや濃度変化などによる被着材への吸着量変化をin situで明らかにしている報告例は少ない。水晶発振子マイクロバテンス（QCM) は、電極表面への物質の吸着による振動数変化をin situで観察でき、得られた振動数変化より吸着量の算出が可能である。ナノスケールでの化学的評価として、AFMを利用した局所赤外分光法（AFM-IR)が用いられている。AFM-IRは、AFMおよびIR分光法を組み合わせることで、IR の分解能限界の克服や複雑な試料の化学構造についてnanoIRスペクトルから評価することが可能となる。本研究では、被着材への吸着量変化をin situで明らかにすることを目的として、ナイロン6 (PA)被覆水晶発振子（QC)表面へのSi 剤の吸着挙動におよぼすpHの影響について、QCMにより検討した。またAFM-IRによりSi 剤吸着被膜の表面分析を行った。