樹脂欠陥を有するFRP材の損傷発展評価

摘要

水素ステーションの商業的稼働を目前に控えて，炭素繊維強化プラスチック（CFRP）製高圧水素畜圧器の開発が急務となっている．複合容器は繊維束を複雑に交錯させるフィラメントワインディング（FW）法で製造されるため樹脂内欠陥の生成が避けられない．この欠陥が畜圧器の終局強度をどの程度低下させるか合理的に評価することは，畜圧器の実用化における最重要課題の一つである．FRP に対する従来の解析は，複合材料を直交異方性均質材料として扱う複合則モデルによるものが多いが，その枠組みでは樹脂欠陥を直接的に扱うことは不可能であり，合理的な強度評価の途が閉ざされている．そこで，繊維束と樹脂を別々にモデル化したメゾスケールモデルを用いて樹脂欠陥を直接的にモデル化し，損傷解析を通じて欠陥が引き起こす終局強度低下を定量的に評価する手法を検討している．本研究では，繊維束と樹脂の基本ユニットに単一欠陥を導入し，欠陥の大きさによる繊維束の損傷進行度の違いが評価可能であることを示す．