高密度状態における海藻個体群の移動シミュレーションとその力学的解析

摘要

エネルギー生産や食品加工分野では，海藻培養を活かそうとする試みがなされている．海藻の光合成は，陸上植物と比較し約10倍程度早いことが知られている．この性質を利用することで，火力発電所などから大量に排出される二酸化炭素の回収やバイオオイルの搾取などが期待できる．また，成長後の海藻から抽出できるオイルの量やその純度について調査し，代替エネルギーとしての有用性を検証している研究などもある．生産性の高い海藻培養の方法として浮遊性海藻を培養器内に高密度で成長させる方法がある．しかしながら，この培養方法では成長過程において複数の海藻同士のもつれ合いが生じ，結果として光合成器官を塞がれてしまい成長速度が低下するなどの課題がある．実際の海藻培養の現場では水流の速度が速いほど，海藻の成長速度が上昇することなどが経験的に知られており，このような海藻の成長を促進·阻害する要因について工学的な見地から検証されている研究は少ない．また，実物を用いて検証するにはコスト的に困難であり，計算機による検証実験の方法を提案し実施する必要があるといえる．本研究では計算機による物理シミュレーションを用いて海藻個体群の移動の解析を行う．円筒培養器を想定した空間内部に水流の発生する水中環境をモデル化し，剛体で構成される海藻個体群モデルを配置し浮遊させることで，移動中における海藻同士の密着状態の遷移および各個体の移動速度について調査する．